野村「15階建てに反対なら、話すことはない」
ならば、うかがいます。
仮に15階建てを容認したら、
どんなよい話が聞けるというのでしょう?
住民説明会における野村不動産の質疑応答は、またしてもノラリクラリ、
窮すると紋切り型で議論を封じるという、あまりにも一方的で不誠実な対応でした。
最後には「我々のやり方で建てる」「15階は譲れない」と言い放った野村不動産ですが、
私たち住民側にも「我々の暮らし」があり「譲れない大切なもの」があるのです。
再三「話し合いの場」を申し入れても応じないため、
私たちからの再々質問と反論を「質問状」として提出、公開することにしました。
野村の言う「やり方」が、本当に
「人、街の大切にしてきたものを活かし、未来につながる」企業理念どおりのものなのか、
それとも私たち住民の声を踏みにじる大企業のエゴなのか、
みなさんひとりひとりに考えていただきたいのです。
「(仮称)高津計画」質問項目(2024.10/25)と回答状況(2025.7/6時点)
※説明報告書(2024.8/5)、住民説明会質疑応答(2024.9/26)、質問状に対する回答書(2024.10/28)より抜粋

15階建ての見直し
質問事項
低層階が広がる大山街道に当計画は突出しており、歴史ある地域特性を毀損する。景観・眺望の破壊や近隣への多大な悪影響、防災面、倫理面などあらゆる意味で無謀。見直しを。
野村の回答
企業として利益を得るために様々な案を検討した結果、15階建ては必須。その中で近隣に最大限配慮した。15階建てに反対なら話すことはない。
[ゼロ回答]
企業利益最優先の計画であり、前提そのものが地域に配慮したものではない。この説明で住民が納得しないのは当然であり、それをもって対話を打ち切るのはあまりに横暴。再度の話し合いを。
騒音・振動対策
質問事項
2年余り続く工事による騒音や振動などの対策と補償は万全か。また1日中騒音・振動にさらされる住民の精神的苦痛に対する対応は?
野村の回答
事業上可能な範囲で配慮する。現場でその都度対応する。何かあれば(野村ではなく)施工会社、警備会社、仲介会社に連絡を。
[不十分]
具体策がなく、対応範囲も限定的。責任の所在があいまい(たらい回しにされる可能性あり)。いつ何が起きるか分からない不安や、継続的な精神的苦痛の解消には応えていない。
被害補償と家屋調査
質問事項
家屋や建物に被害が出たとき、きちんと補償はされるのか。その判断基準と対象範囲は?
野村の回答
隣接周りには家屋調査を実施。工事に起因すると判断されれば補償する。要望があれば道路向かいも調査を検討するが、離れた場所は難しい。案件毎に真摯に対応する。
[不十分]
調査、補償の範囲が狭すぎる。調査期間(10月25~31日)も短すぎる。家屋調査実施調査以外の地域で何かあった場合、補償対象外とされる可能性が大きい。
通学路の安全対策
質問事項
大山街道は狭く、工事車両が頻繁に往来すると大変危険。竣工後も居住者増大によって交通インフラの圧迫が懸念される。子どもたちの登下校の安全をどう守るつもりか?
野村の回答
作業時間を8時30分~18時30分にする。小学校と協議、(住民からの指摘により)地域・町会などにも協力を仰ぐ。入居後の交通インフラに対する影響は少ない。
[不十分]
一定の配慮は認める。下校時の対策については回答なし。学校・町会との協議結果や具体策の提示はまだ。「交通インフラへの影響少」とする論拠の提示を。
風害対策
質問事項
周辺のどの範囲にどれだけの被害があるか調査を。気候変動で台風も激甚化する中、周辺住民にとっては命にも関わる重大な問題。
野村の回答
この規模ではビル風による被害(風害)は起きない。調査はしない。
[ゼロ回答]
気候変動による危険増大の可能性を無視している。住民の不安に寄り添っておらず、被害が出たときの責任から逃げている。納得できる論拠(調査結果、事例など)の提示を。
プライバシーの侵害
質問事項
常に上から覗かれている気がして窓やカーテンを開けられない…。実際に覗いているかどうかに関わらず、そうした状態を放置することは、安心して暮らす権利とプライバシーを侵害する。
野村の回答
北側の12階~15階の窓を一部縮小。共用廊下の手すりを格子から不透明ガラスに変更。
[不十分]
一定の配慮は認めるが、現実的にこの程度で十分かどうかは不明。当事者が安心できる説明を。
落下物対策と離隔距離
質問事項
ベランダが街道に面しており、その真下を子どもたちが登下校する。落下物があったとき、道路と建物の距離は十分なのか。検証はしたか。
野村の回答
ベランダに物を置かないよう入居者にルールを遵守させる。わざと物を投げるなどの犯罪行為を入居者が行わないことが前提。
[ゼロ回答]
論点ずらし。質問に答えていない。
駐車場の騒音・排ガス対策
質問事項
隣接家屋と近いため、騒音や排ガスの対策を。前向き駐車、早朝・深夜の利用制限、ガソリン車・改造車の制限など。
野村の回答
隣接家屋から40cm後退、植栽する。安全のため後向き駐車とする。迷惑行為の禁止など定めた管理規定を設定、入居者に周知徹底する(2024年8月5日 説明報告書)。
[不十分]
一定の配慮は認めるが、たった40cmの後退で十分な効果があるとは思えない。前向き駐車を認めない、管理規定内容の提示もないなど、説明が不十分。
側溝通路の安全と利便性
質問事項
西側の側溝通路は、通学路にもなっている住民にとって大切な生活通路。拡幅を含めた安全と利便性の確保を。
野村の回答
拡幅はしない。一部のパネルを排除し、植栽・庭園灯も設置する。
[不十分]
一定の配慮は認めるが、一部だけ改善されても通路全体の安全と利便性が保たれなければ、十分ではない。
住民の利益
(公益性・社会貢献)
質問事項
この計画は地域住民に多大な苦痛を強いる一方で、何の利益ももたらさない。「近隣商業地域」に高層建築が認められているのは、地域生活の利便を増進する公益性が前提ではないのか。
野村の回答
市のガイドライン「二子地区の景観形成方針・基準」「街なみ作法」に則り、1.5m幅の歩行空間を確保、共用の「憩いの空間」や「マンホールトイレ」も検討(2024年10月28日:書面による質問への回答書)。
[ゼロ回答]
検討するだけでは保障にならないし、この内容では「利便性の向上」ではなく「不便さの緩和」に過ぎない。再度、回答を。
軟弱地盤における
地震対策
質問事項
軟弱地盤である計画地は、地震の際は通常より激しく揺れるため被害も大きい。近い将来必ず起きると言われる巨大地震に向けての対策は?
野村の回答
ボーリング調査に基づき、指示地盤まで杭を施工(2024年10月28日:書面による質問への回答書)。
[ゼロ回答]
調査して杭を打つのは工程として当たり前のこと。懸念される大規模災害に関する対策なし。再度、回答を。
「家屋倒壊等氾濫想定区域」対策
質問事項
多摩川から近い計画地は「家屋倒壊等氾濫想定区域」でもある。災害時の備蓄、避難場所、避難経路の確保など対策は十分か。
野村の回答
法令規制を遵守している。今後も市と協議して精査する。
[ゼロ回答]
法法令規制を遵守していることが、激甚化する災害に対して安全だという根拠にはならない。市との協議結果など具体的な対策の提示を。
日照権、眺望権
質問事項
日照や眺望は、そこに暮らす住民にとって、一度失えば二度と取り戻せない大問題。相応の対応なり補償を。
野村の回答
法令規制を遵守している。北側には離隔距離16m以上空ける配慮をした。補償はしない。
[ゼロ回答]
法令規制は必ずしも住民の受忍限度とは一致しない(東京地方裁判所H3年1月29日判決・判決時報1392号108頁、仙台地方裁判所H4年6月26日判決・判例タイムズ794号62頁)。規制範囲内としても、受忍できないと感じる住民がいる以上、誠意ある対応を。
景観との調和
質問事項
景観形成地区の大山街道に高層マンションは異質。自主協定で住民が大切に守ってきた景観との調和も損なわれてしまう。
野村の回答
市の「景観形成方針・基準」や「街なみ作法」を読み込んだ上で計画した。ガイドラインは、新らしく建て替えることで街並みを整えることを推奨している。また、高層マンションを否定していない。
[不十分/虚偽の疑い]
一定の配慮は認めるが、実際にどのような外観になるのか、デザイン画(パース図)の提示もされておらず説明だけでは不十分。ガイドラインは「新規建て替え」について否定はしていないが推奨もしていない。逆に「高層マンション」については、制定当時は想定していなかったために言及しておらず、「否定していない」と捉えるのは恣意的な拡大解釈。
資産価値の低下
質問事項
周辺地域に様々な悪影響を及ぼす高層マンションが建てば、自宅の資産価値が下がってしまう。
野村の回答
不動産価値は、市況、情勢などを含む様々な要因で決まる。
[ゼロ回答]
質問に答えていない。計画が原因で資産価値は下がらないとする論拠の提示を。
持続可能性
質問事項
少子高齢化、経済低迷、「8がけ社会」とも言われる時代に、なぜ今この地域に高層マンションが必要なのか、理解できない。10~20年先には居住者は高齢化で減少し、建物の老朽化も進み、近い将来に廃墟と化すことは明らか。目先の利益だけでなく、将来のことまで考えた計画なのか。
野村の回答
弊社が答えるべき質問ではない(2024年10月28日:書面による質問への回答書)。
[ゼロ回答]
地域社会や生活環境に大きく関わる事業であるにも関わらず、今もっとも考慮されるべき持続可能性の問題について全く無関心であるばかりか、社会に対する責任すら放棄しているともとれる発言。企業の基本姿勢として問題がある。
コミュニティーの破壊
質問事項
計画で被る被害の大小による意見や意識の違い、補償の有無による不公平感、それらに起因する関係性の悪化、また反対住民とマンション入居者との対立など、この計画が地域の人間関係やコミュニティーに及ぼす影響を考慮したか。
野村の回答
本計画による影響は個人間・位置関係においても違うことは理解する。その中で特に影響の大きい直近北側への配慮を優先した(2024年10月28日:書面による質問への回答書)。
[ゼロ回答]
質問の主旨を理解していないか、わざと論点ずらしをしている。
企業理念との整合性
質問事項
これまでの説明や対応の不誠実さからして、この計画は「人、街が大切にしているものを活かし、未来につながる街づくり…云々」という企業理念と整合しているとは思えない。
野村の回答
説明には時間がかかる。最後まで説明を聞かなかったのは住民側(2024年9月26日:住民説明会)。
「二子地区の景観形成方針・基準」「街なみ作法」の規定を最大限取り入れており、理念に反するものではない(2024年10月28日:書面による質問への回答書)。
[不明]
そもそも、長々と説明しなければ理解できないような理念などあり得ない。また、計画はこれら規定の網をかいくぐったものであり、解釈を変えて本来の主旨をねじ曲げるような強弁をくり返すのであれば(15:景観との調和の項参照)、これこそが理念違反である証拠。
これだけの問題を残したまま、対話を拒否して工事を強行する野村不動産。もともと住民や地域社会のことなど、これっぽっちも考えていないと断じざるを得ません。私たちが15階建てに反対しようとしまいと、これらの疑問・要望に真摯に応えるつもりは最初から最後までないということです。こんな住民無視の好き放題を続けさせてしまっていいはずはありません。私たちは引き続き、おかしいものはおかしいと声を上げ続けていきます。
